「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班

2005年1月〜2008年3月 活動終了したワーキンググループ です。

名 称 : 「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班
      (略称:循環器X線撮影装置の線量実態測定班
班 長 : 塚本篤子 (NTT東日本 関東病院)
副班長 : 坂本 肇 (山梨大学医学部附属病院)
班 員 : 今関雅晴 (千葉県がんセンター)
    : 遠藤悟志 (新葛飾ロイヤルクリニック)
    : 坂野智一 (横浜市立大学附属市民総合医療センター)
    : 樋口綾子 (小平記念 東京日立病院)
    : 福地達夫 (NTT東日本 関東病院)
※前班員 : 吉住直樹 (石心会 狭山病院)
※前班長 : 西田直也 (横浜市立大学附属市民総合医療センター)

目 的 :
 『IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン』に沿った測定手法により、関東地域(東京・神奈川・埼玉・千葉・山梨)の多施設において循環器X線撮影装置の線量実態を把握する。測定の結果は、循環器関連学会・放射線関連学会で随時報告すると共に、これからの「循環器領域の放射線被ばく研究」の基礎データとなるようとりまとめる。


(活動実績)
◆ 多施設線量測定結果からみた装置出力管理と被曝低減技術 : (論文)循環器画像技術研究 No.26-2 2008年9月
◇ 循環器撮影装置の保守管理と安全使用 : (シンポジウム)第243回循環器画像技術研究会 2008年3月
     多施設線量測定結果からみた装置出力管理と被ばく低減技術
◇ 関東広域施設でのPCI時の線量実態についての追跡調査 (線量測定後の各施設の対応について)
     : (ポスター)第71回日本循環器学会総会・学術集会 2007年3月
◇ 関東地域におけるPCI条件下透視・撮影線量の実態 : (講演)第33回神奈川アンギオ撮影研究会 2007年1月
◆ 「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班の報告
     : (論文)全国循環器撮影研究会雑誌 NO.19 2006年12月
◇ PCI条件下での多施設線量測定による線量較差の報告と要因分析 : (口述)第20回日本冠疾患学会学術集会 2006年12月
◇ 関東地域におけるPCI条件下の透視および撮影線量実態 : (口述)第15回日本心血管インターベンション学会学術集会 2006年6月
◇ 東京部会々員施設におけるPCI条件下での循環器X線撮影装置の線量測定 : (口述)第60回JSRT東京部会春期学術大会 2006年5月
◇ 全国レベルのIVR時基準線量の測定に向けて
     −関東地域におけるPCI条件下での線量実態− : 第20回記念全国循環器撮影研究会総会・学術研究発表会 2006年4月
◇ PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態 : (口述)第62回日本放射線技術学会総会学術大会 2006年4月
     (第1報)ガラス線量計測定キットの精度と問題点 / (第二報)関東広域での線量調査
◇ 関東広域における、PCI条件下での線量実態 : (ポスター)第70回記念日本循環器学会総会・学術集会 2006年3月
◇ 関東広域におけるPCI条件下での線量実態 : (口述)第52回JSRT関東部会研究発表大会 2006年2月
◇ PCI時の透視・撮影線量の実態 : (ポスター)CCT2005 (Co-Medical) (優秀演題) 2005年9月

(活動報告)
◇ 2006年度、 2005年度


2007.3.17 第71回 日本循環器学会総会・学術集会 コメディカルセッション一般演題(ポスター)
演題区分 : システム・放射線被曝・撮影技術

関東広域施設でのPCI時の線量実態についての追跡調査 (線量測定後の各施設の対応について)

報告者 : 坂本 肇(山梨大学医学部附属病院)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、PCI時被ばく線量の状況把握のため関東1都4県48施設のPCI条件下での線量測定を行い、第70回総会にて報告した。透視線量率の平均値は29.8±15.5mGy/minで施設間較差は約12倍(6.1〜71.3 mGy/min)、撮影線量率の平均値は4.6±2.4mGy/secで施設間較差は約18倍(0.7〜12.3 mGy/sec)あり、各施設に広域データと共に自施設のデータを報告した。
 そこで今回、各施設への報告後に行った各施設の対応について調査・検討したので報告する。

【方法】
 各施設に透視線量率と撮影線量率の測定結果および広域の測定データを報告し、その後、線量測定の評価、測定結果を踏まえて実施した対応、及び広域での線量測定の意義などについてアンケート調査した。

【結果および考察】
 当研究会で行った広域での線量測定について、自施設での透視・撮影線量が把握でき、さらに多施設のデータと比較可能となった事より、施設間較差の現状把握に役立ったとの回答が多く得られた。また、線量の高い施設では線量調整により線量低減化が行われ、線量が比較的低い施設の中には線量を上げて画質向上を図った施設もあった。これらの事例から、広域での統一した測定法は線量実態把握と線量適正化につながると考える。

【結論】
 PCIでは、手技時の画質と線量の最適化を行う必要がある。今回の調査により、広域での線量測定は各施設の被ばく線量最適化を行うための重要なデータとなることが確認できた。



(論文)全国循環器撮影研究会雑誌 NO.19 6-9頁 2007年

「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班の報告

班長 西田直也(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
坂野智一( 同 )
塚本篤子(NTT東日本関東病院)
福地達夫( 同 )
今関雅晴(千葉県循環器病センター)
坂本 肇(山梨大学医学部附属病院)
遠藤悟志(新葛飾ロイヤルクリニック)
樋口綾子(小平記念東京日立病院)
菊地達也(横浜市立大学附属市民総合医療センター)、天内廣( 同 )、増田和浩(埼玉県立小児医療センター)、加藤京一(昭和大学藤が丘病院)、景山貴洋(千葉県循環器病センター)、若松修(NTT東日本関東病院)

1.測定班の概要
 当研究班は、2004年12月より研究活動を開始した。研究活動の目的は、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)に沿った線量測定の手法により、関東地域5O施設程度の循環器X線撮影装置の線量実態を把握して公表し、さらに、この線量実態を基に心カテ検査における患者被ばく線量の推定も考慮することである。
 線量測定は、当初、「IVR皮ふ線量測定サービスキット」(千代田テクノル社)を使用して、2005年3月に25施設を行い、さらには4月より2006年3月までに線量計に電離箱を、吸収体にはアクリル板を使用して、21施設の線量測定を実施した。今回は、班の活動報告と実績を報告し、さらに両者の線量測定方法を合わせた46施設の線量実態についても報告する。

2.PCI時の循環器X線撮影装置の透視・撮影線量の実態
2.1 目的
 循環器画像技術研究会では、ガイドラインの発表を受け、これにより関東地域の46施設を対象にPCIでの循環器X線撮影装置の線量実態を調査した。

3.結論
 ・測定線量の施設間差は、透視で約12倍、撮影で約18倍と大きかった。(図4、5)
 ・同一条件下での多数施設の線量測定は、施設問差が把握でき、自施設の線量の度合がわかる。
図4 各施設の透視線量 (n=46) 図5 各施設の撮影線量 (n=46)

4.展望
 さらに測定施設数を増やし(全国展開)、線量の施設較差の実態と原因を把握して行きたい。

謝辞:紙面をお借りして、測定キットを借用させて頂いた千代田テクノル(株)社と測定に快く協力して頂いた測定施設の方々に感謝申し上げます。



2006.12.9 第20回 日本冠疾患学会学術集会 報告

PCI条件下での多施設線量測定による線量較差の報告と要因分析

報告者 : 吉住直樹(石心会 狭山病院)

【目的】
 2004年に「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」が発表された。これを受け、循環器画像技術研究会では、関東地域の線量把握を目的に、循環器X線撮影装置のPCI条件下での多施設線量測定を実施したのでその実態を報告する。

【方法】
 埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県のPCI実施48施設を対象とし、各施設でのPCI施行条件下で透視・撮影線量を測定。

【結果】
1. 透視線量率の平均値は28.7±14.5mGy/minで、施設間の最大較差は11倍(6.1〜64.6 mGy/min)。撮影線量率の平均値は4.7±2.5mGy/secで、施設間の最大較差は18倍(0.7〜12.3 mGy/sec)であった。
2. 照射野7インチにおける1パルス当たりの最大線量較差は、透視で8倍、撮影で12倍であった。

【考察】
1. 透視、撮影線量率の施設間の最大較差は大きく、線量が多い施設では被曝低減措置の早急な導入が必要である。
2. 1パルス当たりの線量比較より、装置個々の較差に加えて各施設での透視・撮影の設定条件、被曝低減技術の差が大きな施設間最大較差として現れていると考えられる。

【結論】
 PCI条件下での透視・撮影線量に大きな施設間較差が見られ、画質や被曝低減に対する考え方が反映している。今回公表した多施設測定データを活用し、自施設でのPCI設定条件の見直しに役立てていただきたい。



2006.6.22 第15回 日本心血管インターベンション学会学術集会 報告

関東地域におけるPCI条件下の透視および撮影線量実態

報告者 : 坂野智一(横浜市立大学附属市民総合医療センター)

【目的】
 IVRにおける患者の放射線皮膚障害発生防止を目的に、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」が発表された。ガイドラインの線量測定法は「患者被ばく線量の概略を知る」「他施設との比較」に有用と述べられているが、この測定法による比較可能なデータは報告されていない。
 循環器画像技術研究会では、関東地域におけるPCI時の線量実態を把握するため、フィールド測定と被ばく低減に対する意識調査を実施したので報告する。

【方法】
 関東の25施設を対象としてガイドラインに準拠した方法でPCI条件下の線量の測定を行い、各施設の診療放射線技師に被ばく低減に関するアンケート調査を実施した。

【結果】
 25施設の透視線量は最小値10mGy/min、最大値100mGy/min、平均47±22.4mGy/minであった。撮影線量は、最小値4.2mGy/sec、最大値20.5mGy/sec、平均8.6±4.5mGy/secであった。
 アンケート調査から、線量が低い施設は被ばく低減意識が高く、医師の被ばくに対する関心も高い傾向が見られた。

【結論】
 今回測定の線量較差は透視で約10倍、撮影で約5倍であり、低線量施設で被ばく低減意識が高い傾向が見られた。
 本データは他施設との線量比較が容易となり、各施設の線量の最適化を行う上で重要な指標となる。今後測定施設を増やし発表時には追加報告する。



2006.5.20 第60回 日本放射線技術学会東京部会春期学術大会 報告

東京部会々員施設におけるPCI条件下での循環器X線撮影装置の線量測定

報告者 : 樋口綾子(石心会狭山病院)

【目的】
 近年、IVRにおける患者の放射線皮膚障害発生が問題となっているが、各施設のPCI条件下における線量実態は不明である。そこで、循環器画像技術研究会では、PCI時の透視・撮影線量の実態を把握するために東京部会々員施設にて線量測定を実施したので報告する。

【方法】
 東京部会々員の15施設16装置( 病床数:19〜1,020 )を対象に、各施設のPCI時のX線照射条件下で、透視・撮影線量を電離箱線量計にて測定した。測定は、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に準拠した。なお、吸収体にはアクリル板20cmあるいは23cm水ファントム〈 千代田テクノル社製 〉を使用し、アクリルファントムに換算した。

【結果・考察】
 透視線量は、平均31.6±16.4mGy/min( 最小値7.0mGy/min,最大値55.0mGy/min )であった。撮影線量は、平均4.5±2.0mGy/sec( 最小値 1.2mGy/sec,最大値 8.4mGy/sec )であった。線量の施設間較差は、透視線量で約8倍、撮影線量で約7倍であった。これらの差は、装置個々のX線検出器への基準入射線量の違いや、FDD( focus-detector-distance )、透視・撮影のパルスレート・フレームレート、X線検出器の視野サイズ、付加フィルタの種類と厚みや焦点サイズなどの違いが原因と考えられた。これらの条件設定の違いには、施設間での異なるPCI手技や画質の好み、被ばく低減に対する考え方の差が影響していると考えられた。

【結論】
 今回の測定結果より、透視線量が約8倍、撮影線量が約7倍と、共に施設間の線量較差が大きい実態が判明した。複数施設での比較可能な線量測定は、施設間の線量較差の把握ができ、測定地域での被ばく線量推定の重要な基礎データとなる。さらには、自施設におけるPCI時の設定線量を決定する有用な指標の一つとなる。



2006.4.8 第20回記念 全国循環器撮影研究会総会・学術研究発表会 一般研究報告 (抄録抜粋)

全国レベルのIVR時基準線量の測定に向けて −関東地域におけるPCI条件下での線量実態−

報告者 : 西田直也 (横浜市立大学附属市民総合医療センター)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)の発表を受け、これにより関東地域の多数施設を対象にPCIでの循環器X線撮影装置の線量実態を調査した。

【結論】
・測定線量の施設較差は、透視で約10倍、撮影でも約5倍とありとても大きかった。
・同一条件下での広域で多数施設での線量測定は、施設間差が把握でき、自施設の適正な線量を決定する有用な指標となる。

【展望】
 さらに測定施設数(全国展開)を増やし、より正確な線量の施設較差を明らかにして行きたい。なお、発表では、関東地域の測定施設を増やした線量実態の報告とガイドラインに関する意識調査等を合わせて行う予定である。

【謝辞】
 研究会より、紙面をお借りして、測定に快く協力して頂いた測定施設の方々に感謝申し上げます。



2006.4.8 第62回 日本放射線技術学会総会学術大会 報告
(口述) 演題区分 : 放射線管理; ファントム線量評価

(演題1)PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態 (第1報)ガラス線量計測定キットの精度と問題点

報告者 : 福地達夫 (NTT東日本関東病院)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、広域多施設におけるPCI時の透視、撮影線量の実態を把握するため、2004年6月に発表された「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に掲載されている患者皮膚線量測定法(以下、ガイドライン測定法)に準拠した線量測定をガラス線量計にて行った。第1報では、測定方法およびガラス線量計キットの測定精度について報告する。

【方法】
 千代田テクノル社製「IVR皮膚線量測定サービスキット」(以下、ガラス線量計キット)を用いて、関東広域の25施設を対象にガイドライン測定法に準拠して測定を行った。測定条件は各施設でのPCI時のX線照射条件とした。また、7施設において電離箱線量計測定も同時に行った。

【結果・考察】
 ガラス線量計キットに対する電離箱線量計の測定値の割合は、透視で平均0.68±0.10倍、撮影で平均0.62±0.15倍であった。撮影線量の違う2施設についてX線撮影条件を比較した。A施設はガラス線量計キット77.7kV,802mA,4msec(面積線量計205cGycm2)、電離箱線量計70kV,304mA,3.8msec(同102cGycm2)、B施設はガラス線量計キット77kV,835mA,5msec、電離箱線量計74kV,775mA,5msecであった。2施設ともX線撮影条件に大きな違いがあり、線量計の位置、線量計自体の吸収差によって付加フィルタ厚や焦点サイズ、撮影条件などの設定が自動で変化したと考えられる。この誤差が大きい2施設を除くと、平均0.70±0.06倍と相関が強くなった。

【結論】
 ガラス線量計キットは電離箱線量計と強い相関を持ち測定データの相互比較が可能であるが、線量計の位置によって線量が大きく変わる可能性を認識し、X線撮影条件も同時に記録すべきである。



(演題2)PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態 (第二報)関東広域での線量調査

報告者 : 遠藤悟志 (新葛飾ロイヤルクリニック)

【目的】
 2004年6月に発表された「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に掲載されている患者皮膚線量測定法(以下、ガイドライン測定法)は、自施設の線量を把握・管理することを目的としているが、自施設のみの測定でPCI時のX線照射条件の最適化を図るのは困難である。循環器画像技術研究会では、広域多施設におけるPCI時の透視、撮影線量の実態を把握するために線量測定を行った。

【方法】
 関東広域の25施設を対象に、各施設で設定されているPCI時のX線照射条件下での透視・撮影線量をガイドライン測定法に準拠して測定した。なお、線量測定にはガラス線量計と電離箱線量計を使用した。

【結果・考察】
 ガラス線量計で測定した25施設の透視線量率は、最小値10mGy/min、最大値100mGy/min、平均47±22mGy/min、撮影線量率は、最小値4.2mGy/sec、最大値20.5mGy/ sec、平均7.9±3.8mGy /secであった。測定結果より、透視で約10倍、撮影では約5倍の施設間較差があり、装置個々のX選出力の差に加え、X線照射設定条件(I.I.サイズ、パルスレート、フレームレート等)の違いが影響していると考えられる。皮膚線量が最大値を示した施設においては、撮影のみで97秒、透視のみで20分の照射により初期皮膚紅班の閾線量2Gyに達する。

【結論】
 統一手法による広域多施設での線量測定は多施設の線量分布が把握でき、自施設の設定線量と比較・検討することによりPCI時のX線照射条件設定の最適化に向けた指標になる。今後、電離箱線量計での追加測定を行い、合わせて検討・報告する。



2006.3.26 第70回記念 日本循環器学会総会・学術集会 コメディカルセッション一般演題(ポスター)

関東広域における、PCI条件下での線量実態

報告者 : 塚本篤子 (NTT東日本関東病院)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、 2004年6月に“IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン”(医療放射線防護連絡協議会)が発表されたのを受け、PCI時の被ばく線量状況を把握するため、関東広域1都4県にわたる多施設でのPCI条件時下の線量を測定し、その実態を調査した。

【方法】
 施設ごとのPCI時の条件(X線管−受像間距離、照射野サイズ、透視・撮影のX線照射条件、パルスレートなど)の下、ファントムを用いてIVR基準点における透視・撮影線量を測定した。線量測定システムとして、ガラスバッヂ−水ファントム(千代田テクノル)と電離箱線量計−アクリルファントムを使用した。

【結果および考察】
 ガラスバッヂで測定した25施設の透視線量は、平均47±22.4mGy/min(最小値:10mGy/min、最大値:100mGy/min)、撮影線量は、平均7.9±3.8mGy/sec(最小値:4.2mGy/sec、最大値:20.5mGy/sec)であった。測定線量の施設較差の原因は、幾何学的条件・照射野サイズ・照射設定条件(パルスレート)などの要因が考えられた。

【結論】
 ガラスバッヂの測定では、透視線量で約10倍、撮影線量で約5倍の施設較差がみられた。広域多施設での実測による調査結果は、自施設における適正な照射線量を把握し、PCI時の各種条件を検討する指標になると考える。今後、電離箱線量計による測定結果も加えて報告する予定である。
発表風景



2006.02.12 第52回日本放射線技術学会関東部会研究発表大会 (抄録抜粋)

関東広域におけるPCI条件下での線量実態

報告者 : 今関雅晴 (千葉県循環器病センター)

1.目的
 循環器画像技術研究会では、関東広域の施設におけるPCI時の線量の実態を把握するために、2004年6月に発表された「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)に準拠して、循環器X線撮影装置の透視と撮影の線量を測定した。今回は、PCI時の線量の実態および広域での線量測定の有用性を報告する。

2.方法


 測定期間は平成17年2月から3月で、関東広域(東京、神奈川、千葉、埼玉、山梨)の25施設を対象に透視と撮影の線量ならびに施設の背景について調査した。

○線量測定の方法は、ガイドラインに準拠し、各施設のPCIでのX線照射条件下で透視は2分間、撮影は10秒間、水ファントムにX線を照射して、皮膚表面位置での線量をガラス線量計で測定した(図1)。  水ファントムとガラス線量計は「IVR皮膚線量測定サービスキット(千代田テクノル社製)」(以下、ガラス線量計キット)を使用した。

○施設の背景は、施設・装置概要と検査方法、さらにガイドラインの実施状況(ガイドラインの把握、PCI時の患者皮膚線量管理目標値の設定、ガイドラインに沿った透視線量率の測定実施、放射線被曝の患者説明)について調査を行った。

3.結果 (※結果の一部と考察は省略)

(n=25) (n=25)

3.1.各施設の透視線量(n=25)

 透視線量では、平均値、最小値、最大値が、それぞれに47±22mGy/min、10mGy/min(A施設)、100mGy/min(Y施設)であり、その差は10倍であった(図2)

3.2.各施設の撮影線量(n=25)
 撮影線量は、平均値、最小値、最大値が、それぞれに7.9±3.8mGy /sec、4.2mGy/sec(I施設)、20.5mGy/ sec(X施設)であり、その差は約5倍であった(図3)

3.4.施設背景とガイドライン実施状況
 施設の概要は、病床数が1133〜100床であり、PCIは、年間(16年度)に815〜21 件数であった。装置は4社(シーメンス、フィリップス、東芝、GE)であり、検出器はI.I.が23台、FPDが2台であった。
 測定した施設のガイドラインの実施状況を図5に示した。


4.結論
○関東25施設をガイドラインに準拠して、PCI条件下での循環器X線撮影装置の線量を測定した結果、施設間の線量差は透視では10倍で、撮影でも約5倍あり共に大きかった。
○統一条件下での広域で多施設の線量測定は、施設間差が把握できるために、自施設での設定線量の最適化の有用な指標になる。



循環器装置管理の標準化班

2005.09.28 CCT2005 (Co-Medical) ポスターセッション抄録(優秀演題)

PCI時の透視・撮影線量の実態

報告者 : 西田直也 (公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、ICRP Publ.85 や「IVR に伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)の発表を受け、これにより広域の多数の施設の線量を測定して、循環器X 線装置のPCI時の線量の実態を調査した。

【方法】
 関東の25 施設を対象に、測定手法は、ガイドラインに準拠して行い、各施設のPCI での標準X 線照射条件下で、透視は2 分間、撮影は10 秒間水ファントムにX 線を照射して、透過X 線量をガラス線量計で測定した。なお、ファントムと線量計は千代田テクノル社の「IVR 皮膚線量測定サービスキット」を使用した。

【結果及び考察】
 1) 25 施設の透視線量は、最小値10mGy/min、最大値100mGy/min、平均47±22.4mGy/min であった。
 2) 25 施設の撮影線量は、最小値4.2mGy/sec、最大値20.5mGy/sec、平均8.6±4.5mGy/sec であった。
 線量の大きな較差は、装置の照射設定条件(パルスレート、フレームレート、I.I.サイズ等)の違いが影響したと考えられた。皮膚紅斑の2Gy を管理目標値とすると、最大の施設では、撮影97秒、透視20分の換算になるので、PCI 手技時に容易に超える可能性があり、リアルタイムでの線量の管理が必要である。

【結論】
1.測定線量の施設較差は、透視で約10 倍、撮影では約5 倍でありとても大きかった。
2.同一条件下での広域で多数の施設での線量測定は、施設間差が把握でき、自施設の適正な線量決定に有効である。





2006年度 「lVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班 活動報告

班 長 : 塚本 篤子(NTT東日本 関東病院)
班 員 : 福地 達夫(NTT東日本 関東病院)
      坂本  肇(山梨大学医学部附属病院)
      坂野 智一(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
      遠藤 悟志(新葛飾口イヤルクリニック)
      今関 雅晴(千葉県循環器病センター)
      吉住 直樹(石心会 狭山病院)
      樋口 綾子(小平記念 東京日立病院)

【目的】
 2004年に防護連絡協議会にて、『IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン』とそれに伴った「IVRにおける患者皮膚線量の測定マニュアル」が策定された。
 同ガイドライン・マニュアルでは、測定を施設ごとに定期的に実施することにより、自施設の患者被ばく線量の概略を把握すると共に装置出力管理ができるとされている。しかしながら、施設ごとの測定だけでは得られた自施設の線量が妥当かどうか判断できず、基礎となるデータを収集するため、多施設においてPCI施行時の透視・撮影線量の測定を行った。

【方法】
 「IVRにおける患者皮膚線量の測定マニュアル」の方法で、IVR基準点に測定器を置き、各施設のPCI時の条件にて透視2分間、撮影10秒間の線量を測定した。測定施設は、48施設(ガラス線量計:千代田メデイカルと23cm水ファントムを使用25施設、電離箱線量計とアクリルファントム20cmを使用23施設)。

【活動報告】
T.学会発表(現在までの全ての発表、H18年度は4.から)
1. 2005年 9月 CCT2005:『PCI時の透視・撮影線量の実態』西田 直也
2. 2006年 2月 日本放射線技術学会 第52回関東部会研究発表大会:『関東広域におけるPCI条件下での線量実態』 今関 雅晴
3. 2006年 3月 第70回記念 日本循環器学会総会・学術集会:『関東広域における、PCI条件下での線量実態』
4. 2006年 4月 第62回 日本放射線技術学会総会学術大会:『PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態 (第一報)ガラス線量計測定キットの精度と問題点』 福地 達夫
5. 2006年 4月 第62回 日本放射線技術学会総会学術大会:『PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態 (第二報)関東広域での線量調査』 遠藤 悟志
6. 2006年 5月 日本放射線技術学会 第60回東京部会春期学術大会:『東京部会会員施設におけるPCI条件下での循環器X線撮影装置の線量測定』 樋口 綾子
7. 2006年 6月 第15回 日本心血管インターペンション学会学術集会:『関東地域におけるPCI条件下の透視および撮影線量実態』 坂野 智一
8. 2006年12月 第20回 日本冠疾患学会:『PCI条件下での多施設線量測定による線量較差の報告と要因分析』 吉住 直樹
9. 2007年 3月 第71回 日本循環器学会総会・学術集会:『関東広域施設でのPCI時の線量実態についての追跡調査(線量測定後の各施設の対応について)』 坂本  肇

Fig.1 (n=48) Fig.2 (n=48)
 今年度は、2つの測定系の換算係数を出し、48施設のデータ結果を集計した(Fig.1、2)
 また、東京部会へは東京部会施設のみのデータを発表した。測定と同時に施設にお願いしたアンケートと測定データの関係から、患者被ばく線量の低減には、術者である医師と放射線技師の協力が必要との報告をした。線量較差の要因分析、また測定後のアンケートによる追跡調査の報告も行った。

U.結果の送付
V.測定後のアンケート調査
 以上のような活動を行った。

 H19年度は、日本放射線技術学会への論文投稿を予定している。



2005年度 「lVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った循環器X線撮影装置の線量実態測定班 活動報告

班 長 : 西田 直也(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
副班長 : 塚本 篤子(NTT東日本 関東病院)
班 員 : 坂野 智一(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
      福地 達夫(NTT東日本 関東病院)
      今関 雅晴(千葉県循環器病センター)
      坂本  肇(山梨大学医学部附属病院)
      遠藤 悟志(新葛飾口イヤルクリニック)
      樋口 綾子(小平記念 東京日立病院)

報告者:西田 直也

1.測定班の概要
 当研究班は、2004年12月より研究活動を開始した。研究活動の目的は、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」に沿った、線量測定の手法により、関東地域50施設程度の循環器X線撮影装置の線量実態を把握して公表し、さらに、この線量実態を基に心カテ検査における患者被ばく線量の基礎データ構築の資料とする。線量測定は、2005年3月より開始して2006年3月まで1年間行った。なお、これらの線量測定の結果は、以下の活動実績の関連学会に発表して広報活動した。

2.「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」の要旨
 このガイドラインは2004年6月9日に「IVR等に伴う放射線皮膚障害とその防護対策検討会」のメンバーによって発表された。ガイドラインの目的は「IVRに伴う皮膚障害の発生を防止」することであるが、やむをえず患者様へ皮膚障害の影響線量を超過した場合の対策も明記してある。ガイドラインでは、診療放射線技師の役割として、第一に当該施設の線量率の把握が必要であり、次いでこれを基に医師、技師間で皮膚線量の管理目標値を決定し、さらには線量の超過時には必要最低限の被ばく低減対策を講じる必要が求められている。また、装置管理として、X線量と機器の定期点検の実施と装置メーカとの保守管理契約も欠かせない。ガイドラインの実施にあたっては、「患者様と医療従事者が信頼をもって協力し合う関係を築く」ことが最も重要と考える。

3.活動実績
(1) PCI 時の透視・撮影線量の実態:(ポスター)CCT2005(Co-Medical)(優秀演題) 2005年9月 《発表者:西田直也》
(2)東広域におけるPCI条件下での線量実態:(口述)第52回JSRT関東部会研究発表大会 2006年2月 《発表者:今関雅晴》
(3)東広域における、PCI条件下での線量実態:(ポスター)第70回記念日本循環器学会総会・学術集会 2006年3月 《発表者:塚本篤子》
(4)PCIにおける多施設での透視・撮影線量の実態:(口述)第62回日本放射線技術学会総会学術大会 2006年4月
  (第1報)ガラス線量計測定キットの精度と問題点 《発表者:福地達夫》
  (第2報)関東広域での線量調査 《発表者:遠藤悟志》
(5)全国レベルのIVR時基準線量の測定に向けて −関東地域におけるPCI条件下での線量実態−:(講演)第20回記念全国循環器撮影研究会総会・学術研究発表会 2006年4月 《演者:西田直也》
(6)東京部会々員施設におけるPCI条件下での循環器X線撮影装置の線量測定:(口述)第60回JSRT東京部会春期学術大会 2006年5月 《発表者:樋口綾子》
(7)関東地域におけるPCI条件下の透視および撮影線量実態:(口述)第15回日本心血管インターベンション学会学術集会 2006年6月 《発表者:坂野智一》
 なお、都合により2006年4月から、NTT東日本関東病院の塚本氏に班長は変更になりました。私の任期中、測定実験を心よく引き受けて下さった施設の方々や、このような活動の機会を与えて下さった研究会に深謝いたします。また、線量測定キットを安価でこころよくお貸し頂いた千代田テクノル社にも感謝いたします。

 最後に、『全国レベルのIVR時基準線量の測定に向けて −関東地域における PCI 条件下での線 量実態−』(第20回記念全国循環器撮影研究会総会・学術研究発表会)の発表内容を以下に記した。


4.PCI時の循環器X線撮影装置の透視・撮影線量の実態
(第20回記念全国循環器撮影研究会総会・学術研究発表 2006.4)

【目的】
 循環器画像技術研究会では、「IVRに伴う放射線皮膚障害の防止に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)の発表を受け、これにより関東地域の46施設を対象にPCIでの循環器X線撮影装置の線量実態を調査した。
【方法】
 線量測定はガイドラインに準拠して行った。線量測定は、当初、「IVR皮ふ線量測定サービスキット」(千代田テクノル社)を使用して、2005年3月に25施設を行い、さらには、4月より2006年3月までに線量計に電離箱を、吸収体にはアクリル板を使用して21施設の線量測定を実施した。
 ファントム(水槽ファントム、アクリル板)と線量計(ガラスバッジ、電離箱)は同一幾何学的配置に置き、SIDは測定施設のPCIの撮影距離とした。この条件下で、測定施設のPCIの撮影条件プログラムを使用して、X線絞りは全開とし、透視は2分間、撮影は10秒間それぞれにガラスバッジへX線を照射して線量を測定した。
 吸収体と線量計の違いによる透視と撮影の線量値の補正は、アクリル厚+電離箱線量計で測定の線量を基準にすると、IVR皮ふ線量測定サービスキットによる線量値の換算係数は、透視と撮影共に0.6になった。よって、IVR皮ふ線量測定サービスキットによる25施設の線量値はこの係数により換算して線量値を比較した。
【結果及び考察】
1.透視線量は、最小値6mGy/min、最大値71mGy/min、平均値30±15.3mGy/minであり、その差は約12倍であった。
2.撮影線量は、最小値0.7mGy/sec、最大値12.3mGy/sec、平均値が4.9±2.3mGy/secであり、その差は約18倍であった。線量の大きな較差は、装置の照射設定条件(パルスレート、フレームレート、I.I.サイズ等)の違いや付加フィルターの挿入の有無さらには、その材質と厚さによる軟X線除去効率の違いが影響したと考えられた。
【結論】
1.測定線量の施設較差は、透視で約12倍、撮影では約18倍と大きかった。
2.同一条件下での多数施設の線量測定は、施設間差が把握でき、自施設の線量の度合がわかる。
【今後の展望】
 さらに測定施設数(全国展開)を増やし、線量の施設較差を把握して公表し、心カテ検査における患者被ばく線量の基礎データ構築の資料に活用したい。全国循環器撮影研究会では、全国展開を視野に今後活動を予定している 。



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