循環器装置管理の標準化班













血管検査室感染対策委員会

2001年4月〜2004年3月 活動終了したワーキンググループです。

名 称 : 血管検査室感染対策委員会
委員長 : 塚本篤子 (NTT東日本 関東病院)
委 員 : 伊藤真紀子(昭和大学横浜市北部病院)
    : 小堀葉子 (昭和大学横浜市北部病院:看護師)
    : 高橋寛治 (昭和大学病院)
    : 谷村久美 (NTT東日本 関東病院:看護師)
※前班員 : 谷口[渡邊]恵美 (昭和大学病院)


(活動実績)
◆ 血管造影室における感染対策の現状(アンケート調査より) : (資料)日本放射線技術学会雑誌 2006年
◆ 血管検査室感染対策についてのアンケート結果 : (投稿)全国循環器撮影研究会誌 2003年
◇ 血管検査室感染対策についてのアンケート その1〜その2 : (口述)第30回 日本放射線技術学会秋期学術大会 2002年10月
◇ X線血管検査室感染対策についてのアンケート調査とその問題点 : (口述)第56回 日本放射線技術学会東京部会春季学術大会 2001年5月

(活動報告)
◇ 2001年度


(資料)日本放射線技術学会雑誌 VOL.62 NO.11 1566-1574頁 2006年11月

血管造影室における感染対策の現状(アンケート調査より)
Status of Measures Against Angiography Room Infection as Determined by Questionnaire

塚本篤子(NTT東日本関東病院 放射線部)
伊藤真紀子(昭和大学横浜市北部病院 放射線部)
高橋寛治(昭和大学病院 放射線部)
渡邊恵美( 同 )
菊地達也(横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部)、田島 修(埼玉県立循環器・呼吸器病センター 放射線技術部)、増田和浩(埼玉県立小児医療センター 放射線技術部)、若松 修(NTT東日本関東病院 放射線部)、佐藤次男(千葉県循環器病センター 放射線科)、中津靖夫(昭和大学病院 放射線部)

Summary
 Although the cleanliness of the angiography room and that of the operating room have long been equally attended to,the concept of Standard Precautions (including the basic measures and procedures to prevent infection) of the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), 1996, as well as the introduction of transmission-based precautions,have been changing to preventive measures that are based on concrete measures.
 Therefore,a questionnaire was introduced in order to determine the actual status of countermeasures against infection used in the angiography room. The questionnaire was sent to 530 institutions, and 286 responded, a response rate of 54.0%.
 Its results significantly reveled the following: 1) unexpectedly low recognition of the need and importance for the CDC preventive measures against infection, 2) a considerable number of institutions continuing to perform the conventional preventive measures, 3) problems with education systems on preventive measures, and 4) handwashing the most important measure against infection, failing to be adequately carried out noticeably among radiological technologists.

要旨
 血管造影室の清潔度の管理はながらく手術室に準じる形で行われてきたが、1996年に刊行された米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の標準予防策(Standard Precautions)および感染経路別予防策(Transmission-based Precautions)の概念が導入され、根拠に基づく予防策に変わりつつある。
 そこで、血管造影室の感染対策の状況を把握するためにアンケート調査をおこなった。アンケートは530施設に送付し、回答286施設、回答率54.0%であった。
 調査の結果、1) CDCの感染予防策に対する理解度が低く、2) 旧来通りの予防策がまだ多くの施設で行われていることや、3) 予防教育体制の不備が認められた。4) また、感染対策で最も重要とされる「手洗い」が、特に診療放射線技師で実施されていない状況が見られた。

はじめに
 血管造影室の清潔度の管理は長らく手術室に準じる形で行われてきた。
 1996年に、米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)から刊行された、感染予防策の基本的な手順と手技を包括した標準予防策(standard precautions)および感染経路別予防策(transmission-based precautions)の概念が導入され、根拠に基づく予防策に変わりつつある。
 血管造影室では観血的検査を行うため、術者やスタッフへの感染の危険性や病院感染の媒体となりうる可能性がほかの放射線部門より高いと考えられる。そこで、血管造影室の感染対策の現状を把握するためにアンケート調査を行った。



(自由投稿)全国循環器撮影研究会誌 NO.15 85-93頁 2003年

血管検査室感染対策についてのアンケート結果

塚本篤子(NTT東日本関東病院)
谷村久美( 同 :看護師)
伊藤真紀子(昭和大学横浜市北部病院)
小堀葉子( 同 :看護師)
高橋寛治(昭和大学病院)
渡邊恵美( 同 )
田島 修(埼玉県立循環器・呼吸器病センター)、増田和浩(埼玉県立小児医療センター)、菊地達也(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター)、天内 廣( 同 )、若松 修(NTT東日本関東病院)、佐藤次男(千葉県循環器病センター)、中津靖夫(昭和大学病院)

はじめに
 血管検査室は、血管撮影としいう観血的検査を行うことから、術者およびスタップの感染の危険性や院内感染の媒体となりうる可能性が他の放射線部門より高いと考えられ、血管検査室における清潔度の管理は、長らく手術室に準じる形で行われてきた。1996年に米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の感染予防策の基本的な手順と手技を包括した標準予防策(Standard Precautions:SP)および感染経路別予防策(Transmission-based Precautions)の概念が導入され、根拠に基づく予防策に変わりつつある。筆者施設でも、手術室、ICUなどでの更衣(医師や見学者および面会者の着替えなし)、履物(専用スリッパの撤廃)、粘着マット(廃止)や清掃方法および器材の扱いなどがずいぶん簡素化されてきている。血管検査室でもこの概念に基づいてこれまでの感染対策を見直す必要がある。
 そこで、血管検査室における感染対策の現状を把握するため、アンケー卜調査を行った。本稿では、調査結果の中から診療放射線技師が関与して いると考えられる項目について報告する。また、資料として標準予防策および感染経路別予防策について付記した。

まとめ
1) 設備的には、日本病院設備協会規格で提唱されている準清潔区域までに76.7%の施設が含まれていた。しかし、その設備基準である「陽圧」「フィルター」および「換気」の保有施設数の割合は、準清潔区域の割合より少ないという結果であった。
2) 感染症の情報取得は98.6%の施設で行っており、観血的検査を行うため感染予防に対する意識は高いものと思われる。
3) 院内感染が社会的にも問題になっているためか、感染予防対策に関する委員会の組織率は98.6%と高いものであった。
4) 感染対策に対する教育は、46.6%と回答施設の半数に及ばない現状であった。血管検査室スタッフ専用の感染対策マニュアルも、回答施設の半数以上で整備されていなかった。
5) 病院内には院内感染対策委員会などの組織があるが、それに診療放射線技師が参加していない施設も多くみられる。個々には大変知識のある診療放射線技師もいることと思うが、全体を考えると、医師や看護師の感染や感染対策に対する知識には診療放射線技師は全く及ばないように思われる。
6) 感染対策で今一番必要とされている大切なことは、アンケート結果でも明らかなように、感染とその対策に対する系統だった教育であると思う。一人一人が正しい知識を持ち、自覚して実行していくことが感染予防に繋がる。

(資料請求、お問い合わせは全循研事務局へ zenjunken@yahoo.co.jp



2002.10.18 第30回 日本放射線技術学会秋期学術大会 報告
(口述2題) 演題区分 : 放射線管理; リスク管理・他


(演題1) 血管検査室感染対策についてのアンケート −その1 血管検査室の設備・スタッフの更衣について−

報告者 : 伊藤真紀子 (昭和大学横浜市北部病院)

【目的】
 1996年米国のCDC(米国疾病管理センター)よりスタンダードプリコーション(標準予防策)と感染経路別予防策の概念が導入されて病院の感染予防対策が根拠に基づく予防策に変わりつつある。長らく手術室に準じる形で行われてきた血管検査室の清潔度や感染予防対策の現状を把握し問題点を考察することを目的とする。この報告では、血管検査室の設備(設置場所・二重扉・換気・フィルタ・陽圧・粘着マットなど)やクリーン度、更衣(ガウン・帽子・マスク・シューズカバーなど)について報告する。
【アンケートの項目】
 病床数・検査件数・血管検査室のクリーン度・更衣・手洗い・患者への抗生剤の投与・検査前の患者の体毛処理方法・X線機器(I.I.のカバー・インジェクタのカバー・シリンジ・造影剤の扱い)・清掃する人や方法・感染対策(組織・連絡体制)・スタッフ教育・感染の事例・意見
【結果】
 全国の530施設にアンケートを発送した。回答数は287施設、回答率54.2%であった。血管検査室のクリーン度は日本環境感染学会発行の病院感染防止マニュアルに提唱されている準清潔区域までのゾーン内に76.7%の施設が含まれていた。二重扉・換気・フィルタ・粘着マットは約半数の施設で使用している結果であった。


(演題2) 血管検査室感染対策についてのアンケート −その2 感染予防対策について−

報告者 : 塚本篤子 (NTT東日本 関東病院)

【目的】
 アンケート集約に基づきその1では、おもに設備について述べた。ここでは、患者の感染症の情報入手方法・感染の対処方法や連絡体制・スタッフの感染対策に対する教育方法・病院内の感染予防対策組織や情報発信システム・感染対策に対する意見について報告する。
【結果】
1. 血管撮影室という観血的検査のため、検査前に患者の感染症の検査データを確認している施設は、ほほ100%であった。情報の入手方法も、2種類以上の方法で確認している施設が半数を超えた。
2. 院内感染が社会的に問題になっているせいか、病院内に院内感染予防対策委員会などの組織を持っている施設がほぼ100%に近かった。しかし、その組織のなかに放射線技師が入っていない施設も多数みられた。
3. 放射線部スタッフに対する感染予防対策に関する教育は半数以上の施設で行われていなかった。
4. 感染対策は完壁であるという意見の施設もあったが、X線血管検査室用の具体的な感染対策の方法に不安を持っている意見が多く寄せられた。



2001.05.18 第56回 日本放射線技術学会東京部会春季学術大会 報告
(口述) 演題区分 : 放射線管理; リスク管理・他

(公募研究発表)日本放射線技術学会東京部会雑誌 No.84 p51-55 2002年


X線血管検査室感染対策についてのアンケート調査とその問題点

報告者 : 塚本篤子 (NTT東日本 関東病院)

1.はじめに
 X線血管検査室の清潔度はながらく手術室に準じる形で行われてきました。
 1996年にCDC米国疾病管理センターの感染予防策の基本的な手順と手技を包括した標準予防策(スタンダードプリコーション)および感染経路別予防策の概念が導入されて、根拠に基づく予防策に変わりつつあります。当院でも手術室・ICUなどでの感染予防への考え方が変わり、更衣・履き物・清掃方法・器材の扱いなどがずいぶん簡素化されてきています。
 X線血管検査室では、血管撮影という観血的検査ということから、術者・スタッフの感染や院内感染の媒体となりうる可能性が他の放射線部門より多く考えられます。そこでX線血管検査室の現状の感染対策状況を把握するために、アンケート調査を行いました。
 その結果より現状の把握・分析とX線血管検査室の問題点について整理したので報告します。

2.アンケートの内容
 病床数・X線血管検査室の検査件数・設置場所・クリーン度や粘着マットなどの設備・更衣や履物・手洗い方法・器具の取り扱い・感染対策・意見等の項目について質問してあります。今回は、X線血管検査室の設備と放射線技師が関係する項目を主に述べていきます。
 アンケートは530施設に送付し、回答数287施設であり、回答率は54.2%でした。

3.結果と考察 (※抜粋。図はは省略)
 《X線血管検査室》
 設置場所の回答では、A放射線部(科)撮影室の一室としてが全体の43.2%と半数近くあり、ついでB単独設置が 36.9%の結果でした。
 単独設置では、単独設置が66施設、手術室に隣接がついで29施設、ICU/CCUに隣接の施設が23施設の結果となっています。Cその他の回答の中では手術室内が最も多く6施設です。混合の施設は、2室以上血管検査室を持っている施設の回答であり、全体の15.7%を占めます。その中で一番多いものが放射線部(科)の一室+単独で43施設でした。
 《クリーン度》
 クリーン度についての結果では高度清潔区域・清潔区域・準清潔区域までで210施設あり、全体の76.7%を占めています。約半数の47.3%の施設で二重扉があり、換気に関しては53.6%の施設で、フィルターは回答施設の47.5%で使用しています。又撮影室については回答施設の32.7%が陽圧になっていると答えています。
 日本環境感染学会発行の病院感染防止マニュアルに環境整備では病院のゾーニングが提唱されています。日本病院設備協会規格で普段医療行為が行われている場所を医療ゾーンとして5つにクラス分けし、清浄度と換気条件が規定されています。心臓カテーテル室・血管検査室は、ICU/CCU・手術部周辺区域等と共に準清潔区域に指定されています。一般病室・診察室・X線撮影室などは一般清潔区域になり、準清潔区域では一般清潔区域より高い清浄度が要求され、一般清潔区域以降より陽圧に保つようになっています。
 換気は、日本病院設備協会の病院空調設備の設計監理指針・HEAS−02 1998で、外気量で3回/時間、全風量10回/時間が最小換気回数になっています。
 粘着マットを使用している施設が146施設、51.6%と約半数の施設で使用しています。 粘着マットの交換の時期についての設問では1日に1回が1番多く、33施設33%、検査毎が16施設16%を占めます。交換する人は64%の施設で看護師さんになっていました。
 粘着マット使用の科学的根拠に関しては、粘着マットの使用で、靴やストレッチャーに付着した微生物は減らないしSSI(手術部位感染)の危険性も低下しないとの報告もあり(手術部位感染防止ガイドライン)、靴等の汚れをきれいにするより、むしろ病院全体の清掃を確実に行ってちりやほこりをのぞくことが除菌につながります。また2時間に1回マットをはがさなければ粘着力が保持できないといわれているため、マットとマットをはがす人の人件費を考えると再考の余地は有ると思います。
 《更衣や履物について》
 術者については、ほとんどの施設で滅菌ガウン・帽子・マスク・滅菌手袋を装着しています。専用シューズに履き替えている施設が80%を超えています。ゴーグルの使用は、内科系では45.9%の施設で、シューズカバーは内科系・放射線科で20%を超える施設で使用しています。シューズカバーは術者自身の血液暴露の予防や汚染拡大防止のために使用されます。
 その他のスタッフ・立会いの医師・メーカーの方では、帽子・マスクは70%以上の施設で使用しています。
 外部の見学者に関しては40%の施設で帽子・マスクの着用をしていない結果となりました。
 専用シューズに履き替えない施設は、全体で20%の結果になりました。床面の汚染の研究によると、普通の履き物・清潔にした履き物・カバーをつけた履き物の三者で有意差は見られなかったという報告もありシューズ履き替えも再考の余地があると思います。
 《放射線機器の滅菌カバーなどについて》
 I.I.の滅菌カバーに関してはシングルプレーンでつけるが98.1%、バイプレーンで両方に付けるが78%、正面のみつけるが20.5%の結果でした。(Fig.5)理由としては、術野やカテーテル・術者に触れる恐れがあり、清潔保持のために使用しているというものが最も多い結果でした。その他には造影剤や血液によってI.I.が汚染されたりしないようにや術者がI.I.を操作するためなどの意見もありました。付けない理由としては、頭部血管撮影時、滅菌カバーが患者様の顔に被さるためとの意見がありました。側面に関しては、患者に近づけないためや側面は不潔の領域なのでという意見がありました。
 インジェクターのカバーに関しては、274施設96.5%の施設が使用していませんでした。理由としての多くは延長チューブを使うので術者や滅菌物が不潔になる恐れがないでした。
 インジェクターシリンジ及び造影剤は、一人づつ変えるとの答えが約96%でしたが、13施設では複数人に使用するとしています。理由としては、“パワーインジェクターを使うため”や、“薬杯に移して使うため”などでした。
 《感染症の患者様の情報取得時期とその方法》
 感染症の情報を得る時期については、当日の検査前が54%と最も多く、前日に情報を得ている施設が52.2%あります。混合とは2種類以上の時期に情報を取得している施設数です。
 方法に関しては、看護師さんの申し送り(用紙など)が一番多く69.6%を占めています。その他に関しては、RIS・HISより取得との回答が多くを占めています。それ以外では電話連絡や前日のラウンド時などがありました。混合とは、いろいろなところから情報を取得しているとの回答です。RISやHISの導入により、患者様のプライバシーの保護は考えなければなりませんが、感染症などの情報収集が簡単にいつでも行えるようになり、情報を共有化する意味でも有用であると思います。半数以上の施設で2種類以上の方法により情報を取得していました。
 未検患者の取り扱いについては、88.7%の施設で感染症扱いで処理しているとの回答でした。いいえの施設の中には、結果が出るまで検査をしないという施設もありました。
 《感染症対策の教育について》
 免疫検査の有無に関しては、79.1%の施設で“あり”の回答でしたが、“いいえ”の回答の中には希望者のみとの回答もありました。
 感染のおそれがあった場合の連絡体制は、92%の施設であるとの回答でした。方法として一番多いものは、感染対策委員会などが作成しているマニュアルに沿って行われるとの回答でした。内容としては、洗浄・報告・受診・採血・ガンマグロブリン等の投与・定期的なフォローでした。
 感染対策に関する教育は46.6%の施設で行われているとの回答でした。方法としては、講義・勉強会形式が多く、ついでマニュアル参照や資料配布等でした。スタッフ教育を行う人は感染対策委員が多くついで医師で、感染対策の資料に関しては、回答施設の87.5%の施設でありとの回答でした。しかし、95施設全体の33%が未回答であります。血管検査室スタッフ用の資料があるかとの設問に対する回答は回答施設の40.8%で半数を割る結果でした。この回答も96施設33.4%が未回答です。 
 感染対策に関する組織の有無については、98.6%とほとんどの施設があるとの回答でした。昨今の院内感染に対する関心の高さが伺えます。
 《X線検査室における事故例と感染》
 アンケートの回答に寄せられたX線血管検査室での感染・事故例は、血管検査室という場所がら針刺し事故や血液暴露の事故が多く見られています。針刺し事故22例、そのうちの5例が感染例でした。針刺し事故のうち1件は清掃業者の方とのことでした。
 患者さんが感染したという事例は2件ありましたが、原因・感染場所が同定できていないとのことでした。

4.標準予防策と感染経路別予防策
 スタンダードプリコーションの目的は、主に医療従事者の手指を介して起こる交差感染から患者を防護するということです。標準予防策とはすべての患者ケアに適用する考えであり、その基本的理念は患者の血液・体液や痰・便・尿などの分泌物・排泄物をすべて感染症ありと見なして対処することです。その内容は、手洗い・手袋・マスクやゴーグル・エプロンやガウン・患者ケアに使用した器具・環境対策・リネンに及びます。
 その他に感染経路別予防策があります。感染対策の第一原理は感染経路の遮断であることから空気(飛沫核)、飛沫、接触感染が重視され予防策が提案されています。具体的内容は、関連する多くの書籍、インターネット上、あるいは東京都衛生局が発行している“院内感染予防対策マニュアル”内に納められています。
 標準予防策や感染経路別予防策でも、最も基本となる予防策は手洗いです。X線血管検査室の放射線技師が他のスタッフよりも患者様に接触する機会が少ないからといって、基本的な予防策である手洗いをおざなりにすることは、自ら院内感染を招いていることになります。
 職業感染で最も多い針刺し事故対策については、リキャップを行わないことが最大の予防策になります。血液・体液の暴露による感染を予防するためには、マスクやゴーグルも有用です。又多くの施設でX線血管検査室内はサンダルを履いていますが、感染予防・針刺し事故予防のためには足先の隠れる靴の着用が望まれています。

5.まとめ
 アンケート結果より、設備的には、日本環境感染学会発行の病院感染防止マニュアルに提唱されている準清潔区域までのゾーン内に76.7%の施設が含まれていました。
 感染症の情報取得を98.6%の施設で確実に行っており、観血的検査を行うこともあり、感染予防に対する意識は高いものと思われます。
 院内感染が社会的にも問題になっているためか、感染予防対策に関する委員会の組織率は98.6%でした。また今年度の診療報酬改定に伴い、感染予防対策に関する委員会の組織率はほぼ100%になるものと予想されます。
 しかし感染対策に対する教育は46.6%と回答施設の半数に及ばない現状でした。
 X線血管検査室専用の感染対策マニュアルも回答施設の半数以上で整備されていませんでした。
 また、病院内には院内感染対策委員会などの組織がありますが、それに技師は参加していない施設も多くみられます。個々には大変詳しい技師もいることと思いますが全体を考えると医師や看護師さん達の感染や感染対策に対する知識と技師の知識とではずいぶん差があるように思われます。
 感染対策で、大切なことは多々ありますが、今一番大切なことは感染とその対策に対する系統だった教育であると思います。一人一人が正しい知識を持ち、自覚し実行していくことが感染予防に繋がります。
 最後にアンケートに協力頂いた循環器画像技術研究会・全国循環器撮影研究会・全国の施設の方に感謝します。又、この発表の機会と助成を頂いた東京部会に感謝します。





2001年度 血管検査室感染対策委員会 活動報告

委員長 : 塚本篤子 (NTT東日本 関東病院)
委 員 : 伊藤真紀子(昭和大学横浜市北部病院)
    : 小堀葉子 (昭和大学横浜市北部病院:看護師)
    : 高橋寛治 (昭和大学病院)
    : 谷村久美 (NTT東日本 関東病院:看護師)
    : 谷口恵美 (昭和大学病院)

1.背景
 血管検査室の感染対策や清潔度は、ながらく手術室に準じた形で行われていた施設が多いと思う。その手術室に、1996年米国CDC(米国疾病管理センター)の標準予防策と感染経路別予防策の概念が導入され、根拠に基づく予防策に変わりつつあり、更衣や履物・清掃方法等がずいぶん簡素化されてきた。それに伴い手術室に準じている血管検査室も、いろいろな変更点があった(当院でも、粘着マットの廃止・血管検査室専用靴への履き替えの廃止・主治医や見学者の血管検査用術衣への着替えやガウン着用の廃止・清掃方法など)。そこで、血管検査室の現状を把握するために全国530施設にアンケ ートを発送し(全国循環器撮影研究会と循環器画像技術研究会のメーリングリストも使用させていただいた)、回収・入力・まとめを行った。

2.アンケート内容
 病床数・検査件数・血管検査室の設置場所・設備(クリーン度・2重扉・換気・フィルター・マットなど)・更衣(術衣・帽子・マスク・ガウン・シューズカバーなど)・手洗い・患者様への抗生剤の投与・体毛の処理について・X線機器について(I.I.やインジェクターの滅菌カバー・シリンジや造影剤の扱い)・清掃について・感染症の情報取得方法・感染の連絡体制・スタッフの教育・感染対策の組織・意見。

3.活動
 日本放射線技術学会東京部会の公募研究に応募し、助成を受けることになった。2001年5月18日(土)東京都立保健科学大学で行われた第56回東京部会春期学術大会にて“X線血管検査室感染対策についてのアンケート調査とその対策”を報告し、後抄録を提出した。内容は、X線血管検査室の設備と診療放射線技師が関係するところ(X線機器の取り扱い・感染情報の取得方法・スタッフの教育方法など)を中心に報告した。日本放射線技術学会秋季学術大会にアンケート結果を2題発表し、日本放射線技術学会雑誌・全国循環器撮影研究会誌に投稿する予定である。

4.感想
 血管検査室感染対策委員会をやってくださいと言われて、第一回目の顔あわせをし、早くも一年以上がたってしまいました。その間に、昭和大学病院の渡邊さんが谷口さんになり、九州の宮崎に行かれ、代わりに高橋さんがメンバーに加わりました。委員会は、月に一回程度のハイペースで行いましたが、委員の皆さんに協力していただき感謝しております。今でこそスタンダード・プリコーションと言われでもわかりますが、最初は全然知識がなくて班員の方、特に小堀さんと谷村さん、看護師のお二人にはずいぶん教えていただきました。WGをやって感染や感染対策についての知識が広がり、自分のために一番役に立ったと思っております。




循環器撮影研究会循環器画像研究会循環器技術研究会循環器研究会循環器撮影技術学会心血管画像研究会循研CITEC

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