心筋血流シンチでわかることT心筋シンチ:その2









●脳血流シンチでわかること(その1)
 <秋山真之:昭和大学藤が丘病院>2010.10.23 第269回定例研究会 臨床情報講座


本日の話の流れ

  • 脳血流シンチグラフィ
  • 放射性医薬品(脳血流製剤)
  • 検査方法
     1) 負荷試験
     2) 脳血流の定量
  • 臨床的有用性
  • 統計学的解析法

脳血流シンチグラフィ 

脳血流シンチの現状

脳血流シンチは増加傾向です。

(第6回核医学診療実態調査から:2008年)
脳血流シンチ検査

1.臨床的意義
TIAなどのCTにおいて組織学的変化が生じていない症例や発症直後の脳梗塞など、他のモダリティーにて変化を示し難い状態において有用な検査
アルツハイマー病、てんかん

2.種類
・安静時検査
・DIAMOX薬剤負荷検査(血管を拡張した状態)
・起立負荷検査
脳血流シンチグラフィ

検査の目的

脳の各部における血流状態や脳の働きをみるための検査。

脳の形態をみるエックス線CTやMRIではとらえられない早期の脳血流障害の検出、神経症状の責任病巣の検出、脳の機能評価などに有効。

放射性医薬品(脳血流製剤)

主な脳血流シンチ製剤

拡散型
 133Xe

蓄積型 (汎用)
 123I-IMP
 99mTc-HMPAO
 99mTc-ECD
各製剤の比較

123I-IMP
画像コントラスト良好(初回循環摂取率が高い)
低解像度・検査時間 短縮不可

99mTc-HMPAO
高解像度・短時間検査
高バックグランド(標識率がやや低)

99mTc-ECD
高解像度・短時間検査・剤型選択可能・画像コントラスト改善
組織障害の高度な領域には集積しない。
脳血流SPECTトレーサの血流直線性について

PS値が高いほど、初回循環でのトレーサの脳内摂取率(extraction fraction;EF)が高くなり、高血流域でも忠実に脳血流量を反映することができます。
PS値が小さいと画像のコントラストが低下し、軽度の虚血病巣を見落とす可能性があります。

※ PS値:トレーサの血液脳関門通過性の指標

J Cereb Blood Flow Metab 16:781-793, 1996より転載
各製剤の特徴

123I-IMP(投与量:111〜222MBq)
脳への取込率が高血流領域まで高く軽度な血流変化も捉える。また血中安定性が高いため動脈採血法による定量値測定法に優れているので薬剤負荷試験に用いられる。
(精密検査に)

99mTc-HMPAO/99mTc-ECD(投与量:370〜740MBq)
IMPに比べ静注後早期に脳へ集積し保持されるため、検査時間の短縮が可能、 また投与量が多く高解像度の画像なので小さい病変の描出を捉えられる。
(スクリーニング検査に)
脳血流SPECT画像(解像度)

検査方法

検査方法(負荷試験と定量法)

・薬物負荷試験・ダイアモックス(アセタゾラミド)
脳循環予備能を評価

・Matasテスト
側副血行路の発達を知ることで、手術の適応決定につながる

・脳血流の定量法
ARG法
PatlakPlot法

臨床的有用性

脳血流シンチの臨床的意義

1.治療の効果判定
2.認知症(鑑別を含む)
  脳血流SPECTが最も活用されているのは
   ・主幹動脈閉塞、狭窄症例における負荷脳血流SPECT
   ・認知症などの変性疾患における画像統計学的診断法

3.脳梗塞
4.てんかん
5.RIND(可逆性虚血性神経障害)
6.頭部外傷
7.片頭痛
8.脳死の判定
臨床的有用性
(虚血の診断と治療効果判定)

形態学的検査法では捉える事が困難な発症直後から捉える事が可能です。
虚血症状を伴わない脳血流低下を捉える事も可能です。
脳血管撮影では得られない、脳実質内の微小循環の状態が評価可能です。
薬剤負荷SPECTで、脳循環予備能を検討することにより、血行再建術の適応決定や効果判定が可能です。
左頚部内頚動脈狭窄症
(虚血の診断と治療効果判定)

(1)SPECTで左前頭葉の血流低下
(2)ダイアモックス負荷で左内頸動脈領域の脳血流予備能の低下を認める
(3)左頸部内頸動脈内膜剥離術を施行し、術後経過順調で独歩退院
急性期脳血管障害
(脳塞栓と脳血栓の鑑別)

脳塞栓症:
急激に血管閉塞が起こるので、残存血流量は非常に少ない。

脳血栓症:
血管の狭窄が徐々に起こるので、長期に血流低下状態が先行する。
側副血行路の形成により、発症時にもある程度の血流が残存する。


長尾毅彦ほか:臨床医のための核医学ガイドブック 1999;46-48
臨床的有用性
(認知症疾患の早期診断及び鑑別診断)

アルツハイマー型痴呆では早期から側頭葉内側部や頭頂・側頭葉の連合野皮質に血流低下が生じるとされ、その早期診断に役立つ。

脳血流の低下部位の描出がアルツハイマー型認知症,その他の認知症との鑑別診断に役立つ。
認知症早期検出の意義
アルツハイマー型認知症疑い例(60歳,男性)

認知症スケールは正常範囲だが・・・・
99mTc-ECD SPECTでは両側海馬および海馬傍回(↑)と両側頭頂葉(↑)の血流低下がみられる。
認知症疾患の鑑別

アルツハイマー型認知症
 → 頭頂葉,側頭葉の低下

Pick病
 → 前頭葉,側頭葉前部の低下

脳血管性認知症
 → 前頭葉中心に左右非対称性の低下
 → 脳血管性病変の存在

統計学的解析法
(診断補助として)

視覚的評価から統計学的画像解析へ

eZISを用いることにより、視覚評価では評価が困難な内側面の評価が可能となります。また、脳表像より全体的な血流パターンを捉えやすくなります。

筑波大学病院 精神科 根本清貴先生 提供
eZISとは

患者さんの脳血流画像を標準脳に変換し(解剖学的標準化)、ノーマルデータベース(NDB)と患者さんとを比較解析し、結果表示するもの。
eZISの処理過程

NDBに比べ脳血流が低下或いは増加している領域を何れか、または同時表示
脳血流解析ソフトは 認知症の病型診断に役立つ

病型別血流低下部位(特徴)

・アルツハイマー型
側頭・頭頂葉・帯状回後部

・レビー小体型
後頭葉

・前頭側頭型
前頭・側頭部


福岡大学 第五内科 中野正剛先生
軽度認知障害で機能低下する部位
アルツハイマー認知症(52歳男性)

アルツハイマー型は「帯状回後部」に血流低下を示す




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