●現場の創意工夫-T −造影剤低減方法(左室造影時の造影剤低減の試み)−
 <景山貴洋:千葉県循環器病センター>2008.09.20 第248回定例研究会 臨床情報講座


造影剤の副作用

造影剤副作用は非腎性の副作用と腎性副作用に大別されます.
また,非腎性副作用は即時型副作用と遅延型副作用に分類できます.

造影剤の副作用に関しては,欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR:European Society of Urogenital Radiology)がガイドラインを出しております.ガイドラインはホームページからダウンロードできますので最新情報をチェックしておくといいでしょう.
造影剤の副作用は, 80%が30分以内に発現していることから,造影剤投与後30分以内は患者さんに注意を向けていることが大切です.
遅延型副作用の発生は,造影剤投与後1時間から1週間と広い期間に起こることと,症状が多岐にわたることが特徴です.

副作用発現の原因による分類

アナフィラキシー症状とアフィラキシー様症状

アナフィラキシー症状とは,特定の抗原に感作された後に,もう一度同じ抗原に曝露されるとIgEを介して,肥満細胞や好塩基球が刺激を受けることによって様々なメディカルメディエーターが分泌されて,じんま疹,気管痙攣,血管性浮腫,血圧低下,ショックなどが発現する状態をいいます.

アフィラキシー様症状とは,一度の抗原の暴露で抗原抗体反応を介さずに, ,特定の物質が肥満細胞や好塩基球を直接刺激し,これにより様々なメディカルメディエーターが分泌されて,同様の症状が発現すること状態をいいます(血管造影のABC,中山書店 より).

腎性副作用

腎性副作用の定義は確立されていませんが,多くの文献が欧州泌尿生殖器放射線医学会(ESUR)の定義を用いています.
慢性腎障害は造影剤腎症の発現リスクを4倍高めます.
糖尿病は造影剤腎症のリスクを4倍高めます.

造影剤最大投与量

造影剤最大投与量の算出式に示すように,最大投与量は血清クレアチニン値が高値なほど低く抑えなければなりません.
また,糖尿病のある患者さんでは,血清クレアチニン値が示す腎機能よりさらに低下している場合があることを念頭において造影剤投与量を少なくすることが大切です.

次に,腎症の発生率に注目して下さい.造影剤最大投与量が算出式の範囲内であれば発生率は2%ですが,算出式以上使用すると21%と発生率がたかくなります.

造影剤を最小限にとどめる努力が腎症の発生を低減することにつながることになります.



コメディカルが造影剤の副作用に対処するポイントとして重要なことは,アレルギー歴,腎障害などのリスクを事前に把握することが最も大切です.
また,アナフィラキシー(様)反応が出たときの心の準備,薬剤.機材の準備をしてすぐに対処できるようにしておきましょう.

造影剤投与量低減の試み

ここからは,造影剤投与量低減の目的で試行しているDSAによるLVGについて紹介致します.

DSA LVG

当院では30コマ/秒で撮影できるバイプレンDSAでLVGを施行しています.
きっかけは小児のDSAです.

当院で小児の造影は,冠動脈造影など除いて,ほとんどすべての造影がDSAで行われています.
小児は体格が小さいために,造影剤投与を慎重に行う必要があり,少ない造影剤投与量で良質の画像を得る方法としてDSAを使用している訳です.

この小児の考え方を成人のLVGに適応してみようと考えたのです.
RAO30°とLAO60°(50°)のバイプレン透視で,カテーテルの位置決めを行います.RAO30°で左室中央かつLAO60°(50°)で左室流入路が良い位置です(次スライド参照).

次に,イニシャルフレミングをします.このとき息止めを5,6秒間してもらうよう説明します.
そして,テスト造影をして,内腔の大きさ,カテーテル位置,心室性期外収縮の有無を調べます.

カテーテル位置が良く,心室性期外収縮が出ていなければ,造影剤注入量を決定してDSAで撮影します.

透視時のテスト造影で左室内腔の大きさが,大,中,小いずれかを判断し造影剤注入量を想定します.

また,左室内腔のカテーテル位置はとても大切です.少ない造影剤注入量で良好な造影を得られるベストな位置は,スライドのシェーマに示すカテーテル位置です.大動脈,左室の形態,カテーテル操作技術によりベストな位置とは必ずしもなりません.その場合には造影剤注入量を増減して対処します.

当センターでは,DSAでLVGを施行することで造影剤注入量をDAと比較し, 10ml低減することを目標にしています.
DAとDSAにおける左室造影時の造影剤注入量の対比表です.

実際の左室造影では,透視でテスト造影を施行した後,DAで撮影した場合の造影剤注入量(例,8ml/s,28ml)を想定し,本表からDSA時の造影剤注入量(例,5ml/s, 18ml)を決定しています.
造影剤注入条件 5ml/s, 18mlでのLVG(RAO30°)です.

心基部から心尖部まで造影されており,前壁基部,前側壁,心尖部,下壁,下壁基部までの壁運動評価が視覚的に可能です.
前スライドと同症例のLVG(LAO50°)です.
中隔壁,後壁の壁運動の視覚的評価が可能です.

同一症例のDSAとDAの比較です.

造影剤注入量は,DSAがDAと比べ1秒間の注入量では3ml, 全量では10ml低減しています.画像についてはDSAはDAに劣ることなく壁運動や駆出率(EF)の評価が可能です.
左室の画像解析の結果です.

解析で重要な拡張終期と収縮終期のトレースもできています.

DSA LVG失敗例

DSA LVGの失敗例です.

左画像は息が止まっていますが,造影中(右画像)に息を吐いてしまい横隔膜が挙上し,これが原因となりアーチファクトを生じています.本画像では,壁運動評価や駆出率の算出が困難です.患者さんに息止めの重要性を説明するとともに,テスト造影段階での息止めの練習が大切です.

このようなLVGの場合,画像処理でDA画像(コントラストの低下した画像になってしまいますが)にして観察することで,壁運動の視覚評価は可能です.

LVGにおけるDSAとDAの比較

DSAはDAと比較し10mlの造影剤を低減することができます.

一方では,FPDへの入射線量がDAよりも1.7倍高いことから被曝線量の増加につながりますが,造影剤注入量の低減によって熱感や造影剤腎症など造影剤用量依存性で発現する副作用の軽減に有効と考えます.

DSA LVGの適応と効果

左室の壁運動や駆出率(EF)は,造影剤を使わないMR,RI,心エコーなどでも評価が可能です.これらのモダリティーは非侵襲的であることも有用です.
また,これからは解析手法がさらに成熟し,PCIや外科的手術後のフォローアップには,これらのモダリティーで評価し,アンギオにおけるLVGは少なくなって行くものと予想されます.

しかし,予後の推定や治療適応を決定する際にはゴールデンスタンダードとしての地位は不動とも思います.

今回はDSAによる造影剤注入量を低減したLVGを紹介致しました.特に腎機能が低下している患者さんには有効であり,用量依存性で発生する副作用の軽減に期待が持てるものと考えます.




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