(教育セミナー) <血管撮影技術基礎教育セミナー> (実績報告) (テーマ発表)全国循環器撮影研究会誌 NO.13 59-60頁 2001年 患者本位の医療を目指して <循環器検査領域での取り組み>
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図1 テクニカル・ディスカッション フォーマット | 図2 テクニカル・ディスカッション資料 | ||
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このフォーマットの最大の特徴は、検査の「キー データ」、「キーポイント」、「キーテクニック」、「キーイメージ」を別枠で抽出していることにあります。「キーデータ」には、カテ前情報の中で検査に最も重要な情報を具体的に記載します。「キー ポイント」には、病態予測に応じた検査のポイントを具体的に記載します。「キーテクニック」には、 技術計画の内容で特に重要視すべき項目を具体的に記載します。「キーイメージ」には、目的達成に 必要とされる画像の結果または具備条件を具体的に記載します。これら4つの別枠によって、担当技師が何を重要視し、何を考え、どのように技術計画を立案し、どういった画像を求めていたのかを的確に知ることができ、造影計画のプロセスを理解することができます。
最後に、日常業務の中でこのテクニカル・ディスカッション様式を活用することにより、解剖、造影像、心電図、血算・生化などの臨床的知識ならぴに被曝管理、患者接遇といった放射線技師の職責など様々なことが学べますので、心カテ業務に入って日の浅い方には特にお勧め致します。
(資料請求、お問い合わせは全循研事務局へ zenjunken@yahoo.co.jp )
シネ撮影研究会誌 NO.13 84-86頁 1996年
天内 廣(横浜市立大学医学部附属病院)
1.高度先進医療に携わる放射線技師の役割
21世紀の医学環境は新技術の更なる発展によって大きく様変りすると考えられております(表-1)。そのような時代の流れの中で、心・血管カテーテル検査室に従事する放射線技師は何を未来志向して行動すべきなのでしょうか。思い付くままに 表-2 に項目を上げてみました。
表-1 21世紀の医学環境 表-2 21世紀に向かってやるべきこと
撮影技術面では、心血管造影技術を「科学技術」として研究され体系化してしていく仕事や、撮影補助システム(例えば撮影角度を自動的に算出し設定するナピゲーションシステムなど)を研究開発し、業務の効率化や自動化を推進してしていく仕事が必要と考えます。また検査前情報や検査中情報を解読し、造影技術に結びつけていく論理的なトレーニングも必要と考えます。
画像工学技術分野では、デジタル画像技術(記録・画像処理・再生・解析・保管・通信)を中心としたソフト・ハード両面での更なる研究開発がなされ、即時性、信頼性、操作性の向上と診断支援システムの開発は今後も加速度的に進むものと考えられます。
管理技術面では、経営理念に基づいた業務アセ スメントが今後さらに厳格になるものと考えます。放射線機器等の効率的な運用と放射線の安全利用は、放射線技師にとっては永遠の命題であります。
教育面では、新人技師の卒後教育の場として、また中堅技師の専門技術教育や最先端技術の情報交換の場として研究会等の役割は今後ますます重要になってくると考えます。あえて極論すれば、専門研究会等の今後の発展とその活動が、高度先進医療に携わる放射線技師の将来を決定づける鍵を握っていると言っても過言ではないように思います。
2.症例報告の勧め
さて本稿では、心血管造影の造影技術を「経験」から「学問」に脱皮し発展させるための教育ステップの1つとして、「症例報告」が放射線技師のレベルアップに大いに役立つことを述べたいと思います。
この狙いは、症例報告を通して、臨床情報の中で“撮影技術学的に有用な前情報とは何か”を教育し、科学的に造影を計画し、実行し、評価し、フィードパックする思考のプロセスを教育・訓練しようというものであります。
具体的には“臨床情報から病態(形態や血行動態)をどの様に予測したか”“それをふまえて、いかに撮影(造影)計画したか”“検査結果と造影像の解説”“結果をどのように評価したか”“何か新しい知見は得られたか”“放射線技師としての職務責任(被曝低減、最適画像の提供、患者接遇ほか)を十分果たし得たか”などについて発表 します。
表-3 に心血管造影技術に必要な前情報とその必要性を示しました。
「患者の一般情報」の中の年齢や体重の情報は、造影剤の注入条件の算定に活用し、「入院時の診断名」からは病態を予測します。「検査内容・手技」の情報からは器材の準備や消毒部位を予定します。「現病歴・カテ歴・手術歴」からも病態や血行動態の詳細な情報が把握でき、造影前の極めて重要な情報源となります。「検査所見」からは患者の血液・生化学情報や各種画像情報や心電図情報などを元に、疾患の知識をさらに深めることができ、また、腎機能や心機能関連のデータからは造影剤の使用量を制限する因子についての考察を行います。「患者の心理的・身体的情報」からは検査への理解度や心配ごと、性格、身体上の問題点、看護上の問題点等を把握し、当日の患者対応の羅針盤とします。
表-3 心血管造影に必要な前情報とその必要性
表-4 に症例報告のフォーマットの1例を示しましたが、研究会などで症例報告をする際の基本フォーマットととして活用してみて下さい。
まず、「使用機器・器材・処理条件」を紹介し、「臨床情報」の項では患者の一般情報と、検査目的と、検査所見を記載し、所見から推測される病態(形態や血行動態)を記述します。次に、その病態に対して撮影技術学的に留意しなければならないことを記述します。例えば、胸部X線写真や心電図や心エコー所見などから心拡大の有無や、血行動態の異常や、心陰影の異常の有無などを読み取り、心拡大例ではX線負荷が大きくなり撮影条件が上昇することや、画像のコントラストが低下すること、さらに心内腔容量の拡大や血行動態の異常は造影剤の注入条件に対しでも考慮する必要のあることを明記します。
そして次に「造影計画」と「造影結果」を述べます。臨床情報をもとにして計画された造影剤の注入条件やangulationなどの技術パラメータを提示し、造影像を供覧しながらその結果と造影像を解説します。さらに、撮影条件、総透視時間、総撮影時間、推定被曝線量、造影剤の注入総量などの結果も補足します。
最後に「評価」を行い、放射線技師の技術的評価(造影剤の注入条件、angulation、panning、イメージサイズなどの計画が適切であったかなど)と臨床的評価(検査目的は達成されたか、得られた画像が患者の病態を的確に表現していたか、診断的評価は高かったかなど)を行います。また、技術的、あるいは臨床的に新しい知見(反省点を含む)が得られたか、放射線技師の職責を全うすることができたか、といったことについてもコメントするようにします。
表-4 症例報告のフォーマット例
以上、症例報告の1例を示してその内容を解説してきましたが、このような症例報告を継続的に行うことによって、撮影技術を科学的に分析できるようになり、画像をチェックする目が養われ、自らの仕事も客観的に評価できるようになると思います。また、多くの人達とのディスカッションにより、自らの仕事を真摯に見つめ直すこともでき、カテーテルスタッフの一員としての専門性も高まるものと考えます。
今後、研究会などで活発に症例報告がなされていくことを期待します。
(資料請求、お問い合わせは循研事務局へ citecjunken@yahoo.co.jp )
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